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大豪邸 [診療日記]

4月2日(月)くもり

 今日の午後の訪問はすごく余裕があるはずだったが、1件遠方の方が急患になってしまいあわただしいスタートになってしまった。午前の外来診療中に訪問の準備をし、診療後すぐに診療室を飛び出した。
 近くを流れる神田川沿いの桜は満開と言うのに、曇り空で少し肌寒い。何て盛り上がらないんだ。1件目のAさんのお宅は大豪邸。庭も立派で四季折々に楽しめるようになっている。僕はいつものようにお庭を横切り、大きな玄関ドアの横にあるインターフォンを押した。「ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン」と4回音がしたが、中から何の反応もない。20秒、30秒。さすがにおかしい。もう一度押してみた。同じよう音がするが反応がない。少し不安になってきた。たしかに大豪邸だからなぁ。到着してから3分ほど、もう一度押してみる。まあ、これでダメなら今日は帰るか。それにしてもAさんのお宅に来るため慌しくなったのに、と思うと少し腹も立ってきた。そしてもう一度インターフォンのボタンを押す。すると、
「はい、どちらさまでしょうか」
と他人行儀な声。
「訪問歯科の五島です」
と告げると特に返事もなく反応もなくなった。それから1分ほど、何の反応もなかった。「どうなってるんだ!」と思いもう一度インターフォンのボタンを押す。同じように
「はい、どちらさまでしょうか」
「訪問歯科の五島です」
そして反応なし。かれこれ10分近く立たされっぱなし。だんだん腹も立ってきて「もう帰ろうか」と決意した瞬間、塀の外から
「どちら様?」
という声。驚いてうしろを振り返ると、奥様が外出から戻られたようだった。
「まぁ、先生、ごめんなさい」
と言われて勝手口の方に向かっていかれた。家の中から奥様が高齢の女性のお手伝いさんを叱咤する声。事情がいろいろ分かってきた。きっとお手伝いさんは僕が来ることを知らされておらず、ドアを開けるかどうか思案していたのだろう。
 Aさんの入れ歯の処置をして無事終了。さぁ、次の方まで急げ~!あと5分しかない。今日は早く出たのに何でこうなっちゃったんだ。そう思うとまた少し腹が立ってきた。


大変長らくお待たせいたしました [プロフィール]

 皆さんご無沙汰いたしました。ついにブログ再開です!
 実は、このブログも元に「愛は自転車に乗って 歯医者とスルメと情熱と」という本を書いていました。と言っても執筆は実質2ヶ月だけでしたが、このたび無事に発刊されました。内容は訪問診療日記風の小説です。これまで続けてきた訪問歯科診療十年間の集大成でもあります。
 決して僕自身が有名になることはありませんが、訪問歯科診療の真実や「口から食べる」ことの素晴らしさが少しでも社会に認知されればと考えています。ご興味がありましたらぜひご一読ください。感想なども楽しみにしていますよ。

愛は自転車に乗って―歯医者とスルメと情熱と

愛は自転車に乗って―歯医者とスルメと情熱と


猛暑到来 [診療日記]

8月7日(月)
 午前中の診療を終え、準備を終えて一歩外に出て感じた。夏が来た!ついに来た!自転車置き場に向かい一歩ずつ足を踏み出すたびに汗が一粒づつ浮き出す感じがした。自転車置き場で荷物を積むとすぐにサングラスに換えいざ出発。すでにあせびっしょり。
 1件目は僕たちの自宅そばのAさん。以前から時々、歯の根っこが残っている所が痛くなる。今回も今朝お電話があり急行した。いつものようにお薬を歯ぐきに塗るだけなのだが、ご家族にも「そろそろ抜いたほうが・・・」とお伝えした。最後に保険証の確認をさせていただくと、2割負担だったものが秋から3割に変更になると書いてある。単純に医療費が1.5倍になる。これは、と思い、先ほどの発言を訂正し「秋までに抜きましょう!」。なんて下世話な話だ。
 2件目は先日奥歯を抜いたBさん。傷口はキレイになっていたが問題発生!今度は別の歯を抜いて欲しいとのこと。実は病気のせいで歯並びがどんどん乱れ、舌に当たってしまうのだ。そんな状況だから抜いた後、入れ歯を作れるかどうか不安。Bさんの前で「う~ん」と考えていると、「考えて」とBさん。結局次回歯を抜くことにした。決意はしたが、やっぱり不安。
 いったん自宅に戻り、自転車を置いて電車で3件目のCさん。家の前では大きなタオルで顔面を拭き呼び鈴を鳴らした。飲み込みのチェックをしているのだが、ここの所ずっと喉にたんがたまっていてさえない。今日は聴診器持参で登場、ずっと聞きながらチェックをした。最初はきれいな音だったが、一口ゼリーを食べるとむせてしまい、タンの音が「ガーガー」。結局周囲をマッサージして終わり。
 4件目のDさんはむし歯予防のフッ素を塗布して終了、5件目のEさんは仮歯を作った。
 全部が終わったのは6時過ぎ。汗を多くかいたせいで疲労困憊。


山男 [診療日記]

6月14日(水)
 もう、梅雨に入ってしまい爽やかな青空を期待できなくなってしまった。それでも雨が降らない曇り空というだけで感謝。
 1件目のAさんは90歳を前にしておられるが、骨がしっかりしていてとにかく太い。学生時代山岳部としてならし、鍛え上げた身体はさすがである。現在、下の総入れ歯の調整中であるが、どうやら調子は良さそう。噛み合わせのチェックをして終了。奥様に「Aさんはこれほど骨がしっかりしているのに歯がなくなったのは残念ですね」と声をかけた。すると、「戦争中に全部やられたんです。南方にいるときは兵糧攻めで1ヶ月ほとんど食事をしないでいたんだそうで、最後は靴下の毛糸も食べたようですよ。」と奥様。穏やかに微笑むAさんが偉大に見えた。
 2件目はBさん。口の機能が低下してしまい唇を上の歯でかんでしまう。うまい方法がなくて困ってしまうが、今日はゴム質の材料でカバーを作ることにチャレンジ。ところが、なかなかうまくいかず次回再チャレンジすることになった。何か良い方法はないものか。
 いったん戻ってから3件目のCさん。以前入れた入れ歯が少しゆるくなったとのこと。今度息子さんと同居するために遠方へ引っ越す予定もあるため、もう1つ新しい入れ歯を作ることにした。「引っ越した先にも先生のような方いるかしら・・・」と。
 次は初診のDさん。予定より10分前に到着すると娘さんが「まだヘルパーさんと散歩に行ってるんですよ」とのこと。娘さんに状況をうかがいながら書類を作成しDさんを待った。すると、時報が早いか、Dさんが早いかといったタイミングで予定通りの時間にご帰宅。そのまま椅子に座って頂き診療開始。DさんはAさんと同時代に別の大学の山岳部としてご活躍だった。やはり足腰の強さと骨太な印象が強い。入れ歯を押さえている歯が取れてしまったので僕が呼ばれたのだ。このような修理は得意分野。数分で修理を終えるとDさんも娘さんも満足顔。
 5件目、6件目と口腔ケアを行い、7件目はEさん。結構遠方になる。時間前に訪問してマッサージの方とぶつかったことがあるので定刻少し過ぎにうかがった。チャイムを鳴らしてもいつものような反応がない。まあ、中での介護が大変なのかと思い、ゆっくり玄関の方へ向かったとき、中から見慣れない若者が出てきた。訪問歯科であることを告げると「父は入院しています」。最初は遠方まで来てキャンセルだったのがショックだったが、やはり体調を崩す方が多いのが残念になった。
 8件目は入れ歯の型どりをしたFさん。いったん帰ってGさんの入れ歯の調整を行い終了。長い1日だったが、雨に降られず感謝。


がっくり [診療日記]

6月5日(月)
 月曜日から爽やかな天気になった。梅雨入りが少し遅くなったようでうれしい限りだ。1件目は結構遠方のAさん。午前中の外来終了後、とにかく出発。天気はよいがさほど汗ばむこともない。本当に訪問日よりだ。途中で昼食をとってAさん宅へ。
 Aさんは上下総入れ歯であり、以前下の入れ歯がゆるくなって調整をした。それからは調子よく使っておられる。Aさんは普段一人暮らしであるが、週に何日か娘さんが来られ、僕はその日に訪問している。明治生まれのAさんは今日も絶好調。「よう来てくれましたね。調子いいわよ。」という言葉をさえぎるように娘さんが「「うそぉ、さっき痛いっていてたじゃないの。」と。もちろん、そろそろ痛みが出る頃だと察して久々の訪問。入れ歯を調整して終了。
 次のBさんはちょっと困ったことになっている。今年の初め、下の部分入れ歯を作ったのだが、支えている歯が次々と折れてしまい、支える所がなくなってしまい、すごくゆるい入れ歯になっている。今日は折れてしまった歯を抜く予定で訪問した。Bさんの第一声「ゆるいのよ!」。一応入れ歯を調整したが限界はある。Bさんに早く抜く歯は抜いて新しく入れ歯を作ることをお話して2本の歯を抜いた。
 3件目のCさんは先日上の総入れ歯を入れたばかり。お宅に伺うと訪問看護師の方も待っていてくださり、入れ歯のご報告。「痛みはあまりないようですよ。発音や飲み込みもよくなりました。」なかなかの評価にウンウンと聞いていると、「でも食べる時ははずしています。」と聞いてガクッ!まあ、早く慣れてもらいましょう。
 いったん診療室に戻り、Bさんのところで使った器具を置いてDさんのところへ。Dさんは下の総入れ歯が痛いときもあるというので訪問した。実はDさん、ある有名会社の社長を勤められた方だが、気さくでとても楽しい。入れ歯を調整していると「目もいい、耳もいい、鼻もいい、歯と頭がダメなんだよ。」などと冗談を飛ばす。僕も「入れ歯に会社のマークでも彫っておきましょうか」と冗談を言うと、「いや、うちの家紋のほうがいい。皆に見せてまわる。」と切り返しをくらった。
 夕方5時も回り、自宅に自転車を置いて電車で移動。以前はご自宅で拝見していたEさん、今度は有料老人ホームに入居されたとのことでそちらへ訪問することになった。そちらのホームでご主人と待ち合わせ。遅れないよう急いで家を出た。電車で20分ほどであるが何せラッシュに引っかかってしまった。満員電車で大荷物は結構きつい。電車を降りて徒歩15分。初めて降りた駅であったが迷うことなく到着。
 受付で面会の手続きを済ませ、「Eさんのご主人は来られていますか?」と確認すると受付の方が、「あれ、ご主人もう帰られましたよ」と。最初何の意味か分からなかった。結局ご家族がおられないので治療は出来ず、そのまま帰ってきた。ご主人に電話すると「あぁ、今日でしたか。」と冷静な声。がっくり。


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